---本編スタート♪---
パール判決書 第三部 証拠及び手続きに関する規則
その12
というわけで今年も元気にアカデミックネタw
前回、プロパガンダについて新たな見解が出ました。いかに博識な待避所一丁目の読者諸兄であってもあの発想はなかったんじゃないでしょうか?!
うちからしても、まさに目から鱗鼻からえら呼吸だったわけですが、、、
裁判所は、
満州が日本の生命線であるという日本国民の輿論を示す証拠
の提出を却下したんです。
「かような形式の輿論は役に立たない。もし日本国民が中国の一部を必要とすると考えていたところで・・・それがどうなるのか。中国の一部を必要とするということに関する日本国民の偽りのない信念というものは、それが正直な信念であったとしても、侵略戦争を正当化するものではない」
という理由なんですね。
これについてパール判事は、
本官の疑問とするところである。と言っております。
更に、
外交政策の領域においては、国家の利益の保存がつねに主要な考慮事項とされてきたことは否定しえないことである、とも言っており、
更に更にパルマーストン卿の言葉を引用し、一国の対外問題処理の原則は、その国の利益と名誉と威厳との正当な顧慮と矛盾せずに、可能な限りにおいて、すべての国家との間に平和ならびに友好的理解を維持する、と原則論を述べています。
つまり、
国家の外交政策というものはまず自国の国益を優先とし、その上で諸外国との平和を維持していきましょう、ということは原則ですよってことです。
続けて、
勿論単なる人民の声によってその利益が確立されるということはない。かような利益の存在は、他の証拠によって立証されなければならない
とも言っています。ここはなかなか難しい問題なんですが、例えていうなら、北朝鮮の問題があるからイラクではアメリカに付いていきましょう、という圧倒的多数の国民世論があって、じゃぁその国民とやらが考える国益に沿って付いていったはいいけれど、さて結果はどうですかと。アメリカが北朝鮮を踏み潰したという証拠でもあるんですかと。倫理的な判定はどうですかと。
だから原則としては国益優先でいいんだけど、それがほんとに国益に沿っているかどうかは後の結果から見ていかないとイカン、というわけなんですが、実際には難しい問題なんですね。輿論が間違っているかもしれないということを多数決で決定する民主主義で事前に検証できるかどうか。これはうちは難しいと思いますし、うちはずっとアメリカについていくのは反対しておりましたが、それが仮に正しかったとしても少数派である以上は事前に検証できないってことの証左であるわけですよね。
これがなかなかに難しい問題であることは勿論パール判事もよくわかっていることで、
続けてこう言っております。
事実このような立証の努力がなされてきているのである
ひとたびこれが立証されたものと認める場合には、人民の声はこの利益にたいして彼らがどんなに関心をもっているかを示し、かつ共同謀議の理論を訴えることなくしてこの種の対外政策の採用を、正当化しえないとしても、少なくとも、それに説明を与えることが出来るであろう
要するに、争点は『全面的共同謀議の有無』であるわけですから、それが正しいか正しくないかはひとまず置いて、輿論によって国家が動いているならばそれは共同謀議ではないよねっていうことが証明されますってことです。
中国に対する軍事行動が正しかったか間違っていたかはともかく、それが国民世論に後押しされたものであるならば、一部の指導者による全面的共同謀議という主張は崩れるわけで、そうすると民主主義国家の正常な行動の範囲に入るものであり、いわゆるA級戦犯に罪を擦り付けるということは出来なくなるということです。
大分長くなったので今日はここまでw
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