---本編スタート♪---
パール判決書 第二部 「侵略とは何か」その16
(G)考慮を要すると思われる事項
(6)条約その他に違反せる戦争
その2
前回までのパール判決書
「なぜトニーが!?」「よせジャック!」「うぉぉ・・・」・・・・・
コホン
えー、、、w
前回は、条約や協定や誓約の違反はそれだけでは単なる違約であり犯罪にはならない、ということを論じていきました。
この意味についてはもはやここまで読んだ人ならワカンネってことはないと思います。そんなに難しいことではないですよね。
このほか、細かいことを言うとですね、検察側が上げているものに「麻薬に関するもの」などがあったんですが、それは本件とは全く関係がない、ということで一蹴となっています。特にここで取り上げるようなこともないでしょう。
で、今回は、
国際法に違反する戦争
ここがお題となるわけです。
パール判事が整理するところによると、
1.戦争を放棄する法律
2.侵略戦争を犯罪とする法律
3.敵対行為の開始に関する法律
このことに関連して考えなければならないでしょうと。
このうち、1と2については既に論じておりまして、残念ながら国際法において戦争を禁止する法律というものは確立されなかったことが証明されていますので、特に論じなくてもいいでしょう。
ただし、3.敵対行為の開始に関する法律、については考察がいるわけです。
そこで皆さんに問題です。
宣戦布告せずに仕掛けた戦争は犯罪でしょうか犯罪ではないでしょうか?
これ、実は犯罪じゃないんですね。でもこれ誤解してる人いっぱいいます。
なんなんでしょ。日本はアメリカに対して宣戦布告前に真珠湾攻撃をした!ということがどうも日本人にとっては悪い事という認識があるんでしょうか。中には、だから原爆落とされたってしょうがない、なんて言う人までいる始末(ーー;
確かに、ハーグ条約では、「敵対行為の開始に関する条約」がありまして「第一条、締約国は理由を付したる開戦宣言の形式または条件付開戦宣言をふくむ最後通牒の形式を有する明瞭かつ事前の通告なくしてその相互間に戦争を開始すべからざる事を承認す」とあります。
しかしこれが国際法を変更させたかどうかはまた別問題。国際法に変更がなければ条約に対する違約に過ぎない、ということになります。
結論を言うと、国際法の変更には至らなかったわけです。
これらの条文を注意深く読んでみれば、同条約はたんに契約上の義務を設定するにとどまっており、国際制度になんら新しい法の規則を導入したものではないことがわかるであろう
とパール判事は言っております。パール判事のほかにも、ウェストレークや、コベット、キース博士(本文中に例として上がっています)らも、これが国際法の変更に至っていないという見方をしているようです。
具体的にハーグ条約原文を読んだわけではないのですが、宣戦布告から開戦までの時間軸の設定がなされていないことからも、法律というレベルではないという判断は十分ありえるでしょう。
極端なハナシ、「10年後に必ずわが国に侵略してくるから先に先制攻撃を加える」といって戦争しかけてもいいのかってハナシです。
そういう規定がしっかりしていないと、法律としては機能しないというのが実情でしょう。
それともう少しツッコむと、宣戦布告のあとほぼ同時にミサイルが着弾したとしたらどうでしょう。理屈では問題なさそうですがそれもどうよと。
こうなってくると、
法律の問題というよりは、儀礼の問題であり、もう少し言うと戦略の問題であると。確かにその通りじゃないかと思いますね。
更に付け加えると、日米は事実上既に交戦状態にあり、宣戦布告の遅れは単に外務省の手続きのミスだった、ということを考えていくと、もはや宣戦布告に関する部分で日本を犯罪国家と呼ぶには無理がありますね。
宣戦布告せずに戦争を仕掛けた国家に対しては、せいぜいが儀礼に欠ける国家である、くらいの国際世論喚起、という程度なんですね。
そんな法律論も分からずに、「騙しうちをしたのだから原爆落とされてもしょーがない!」なんて言ってるアホはもうどうしよーもないですね(ーー;
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