---本編スタート♪---
パール判決書 第二部 「侵略とは何か」 その6
(C)右の諸定義の承認に対する諸困難
さてさて、前回からの続きですが、
実はソ連は1933年に複数国との協定の中で侵略の定義に触れております。それは
(1)他国に対して宣戦を布告すること
(2)宣戦布告はなくても、軍隊によって他国の領土に侵入すること
・・・・・以下略
としているわけです。。。
で、ソ連は自衛目的でもなく日本に宣戦布告をした。。。
それを侵略といわずに何を侵略というんだーーーー!!!
と思わず叫びたくなりますね(ー_ー;
しかしパール判事は冷静です。
パリ条約に関する限り、ソ連の布告した宣戦は同条約の規定に違反するものではないと主張できるかもしれない。ソ連のほうでは国際政策遂行の手段として戦争に訴えたのであると主張するかもしれない。
さらに日本は既に同条約に違反し、それによってその利益を享有する権利を失っていたのであり、したがって同条約に違反して戦争を遂行しつつあった締約国に対する戦争であった以上、ソ連のこの戦争は、同条約に違反するものではないといえるだろう。
続けて、
ある特定の戦争が、犯罪的であるか否かの判定の標準が、それが同条約の違反であるか否かにある、とする場合においてのみ、かような抗弁は有効である。
としています。
オランダについては、
オランダの行動に関しては、もしわれわれが侵略という事について、ジャクソン検察官が示唆したような判定の標準(ジャクソンはニュルンベルグ裁判にて侵略者を他国に対して宣戦を布告したものという見解を示した)を受け入れない場合に限り、自衛の手段として肯定することが出来るかもしれない
としています。
これを考察して、
本官は、これら二国をふくむ訴追国が、侵略の判定の基準は他に求めなければならないという共通の立場に立っている事実そのものを指摘すれば十分である
そうしなければ、諸権威によって提案された判定の標準によれば、ソ連は日本に対する侵略戦争を開始したという罪を犯したという結果になるであろう
と言っています。
パリ条約のハナシが出てきたので混乱しちゃうわけですが、
他国に対して宣戦を布告したものを侵略者とする
という判定の基準は、この裁判においては採用されていない、ということです。
ここが結構重要です。最近どうでもよくなってきましたけど、小林よしのりはここをめんどくさがってハショってます^^;『ただしソ連はパリ条約違反ではないという議論も有り得る』というかなりアバウトな書き方をしています。あまり重要とは思わなかったのでしょうけど、宣戦布告をもって侵略戦争を決定する、という議論は凄く重要だと思われます。
ここをちゃんとクリアしておかないと次には進めないはずなんですが。。。
まぁ、ともあれですね、
みずからかように犯罪を犯した国々が、自国民中の同種の犯罪人を等閑に付し、一丸となって戦敗国民を同様の犯罪のかどで訴追しようとは、かりそめにも信じられないので、本官は、各国は侵略という事に関して、この結果を生ずるような判定の標準のいずれをも採用していない、という結論に達するのである。
と、ここを結んでおります。
またまた、小林よしのり氏を引き合いに出して申し訳ないのですが、彼はこれを
『パールはかなり皮肉っぽい結論を下す』
と書いておりますが、何度もしつこく言いますがパール判事は全然皮肉では言っておりません。大真面目に普通に法律論を持ってすれば必然こうなる、と言っているに過ぎないわけです。
法律という化粧をした皮肉、、、こんなレッテルをパール判決書に貼り付ける事はパール判事に対する最大級の侮辱である、ということを肝に銘じて欲しいものです。。。
ちょっと今回難しかったんじゃないかと思います。正直、うちも何度読み返したか。。。Orz
あっさり結論だけ言えば、
「他国に対して宣戦を布告したもの」を侵略者とする、という判定の基準は、本裁判では採用されていない
ということをパール判事は言いましたよってことですね。
だから最初っから結論だけでいいじゃねーか!ってw
毎度の事なんですが、、、好きなんですよwこういうチクチク構築していくのがw
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